第07-11回 生田緑地植生管理協議会市民部会
「萌芽更新地区(A06)の目標植生を考えよう」

2008/1/19 更新

日時 1月19日(土)10:00~12:40 曇、寒い
集合 北部公園事務所2階会議室、萌芽更新地区(A06)
講師 藤間凞子
参加 倉本宣(生田緑地植生管理協議会会長)、白澤光代(生田緑地の雑木林を育てる会)
佐藤登喜子(かわさき自然調査団植物班)、吉田多美枝(同左)、吉留憲子(同左)
上家章子(かわさき自然調査団水田ビオトープ班)、小泉恵佑(同左)、雛倉正人(同左)
内藤朱香(里山の自然学校)、山内冴香(同左)、山内春香(同左)
堀江洋(北部公園事務所)、鈴木修司(同左)、山口泰民(同左)
市民部会事務局/岩田芳美・臣生(かわさき自然調査団水田ビオトープ班)
                  参加者17人
生田緑地萌芽更新地区(A06)は、コナラ林(1,200平方メートル)を1998年に皆伐した地区です。
藤間凞子博士は、この中に600平方メートルの調査区を設定し、翌年4月から4年間は毎月、その後は年4回のモニタリングを、かわさき自然調査団植物班の協力を得て実施してきました。
今回は、この8年間にわたるモニタリングの結果をまとめられて、今後の当該地区(A06)の植生管理を考えるための貴重なデータを発表して下さいました。
生田緑地の樹林は全体的に老齢化が進んでいることは確かで、長期的スパンにおいて少しずつ全体の更新が進められるようにしていくことが、生田緑地における生物多様性保全という視点からも重要な課題となっています。
この視点から見ると、当該ゾーンの持つ意味は大きく、その目標植生と今後の管理施策を決めていく話し合いに、思いがけず、小学6年生が2人、4年生が1人参加してくれたことは素晴らしいことと思われます。私たちの活動は楽しくあることが基本です。




【岩田(臣)】第11回市民部会を始めます。  1998年12月に生田緑地の中で1200㎡の面積で皆伐更新が行なわれました、その場所を藤間先生を中心にかわさき自然調査団では植生調査を続けてきました。その結果をお話し戴いて、今後この萌芽更新地区をどの様にしていくかを皆で話し合いたいと思います。  藤間先生には事前にお願いしていなかったのですが、植生調査の仕方なども話して戴きたいと思います。  見た時に雰囲気が良い、悪いということではなく、植物の評価の仕方等についても勉強し、記録に残しながらやっていきたいと思いますので、機会がある毎に勉強をしたいと思います。

【藤間】色々な所で雑木林を昔のように伐採しようとか、してみようと近年言われてるし、やられていますが、それが昔の雑木林のように回復するのか、しないのかを植物生態学の立場から見ていこうということでやり始めました。  調査のきっかけは、昔同僚だった校長が「生田緑地のあんな場所を丸坊主にしてどうするんだよ。」と私に言ったことです。「それじゃあ。」と思い見に来ましたが、一般の人が見ると「丸坊主だな」と思うだろうなと思いました。  それで植物生態学の立場から、これからどうなるかを調べてみようと思いました。調査団の植物班の方々に大変なご苦労をして戴きました。本当に有り難うございました。それから約10年経ちましたが、一部は論文にして書いたのですが、まだ書き足りないことが沢山あります。  植物班の方々と一所にやった仕事は『伐り株だより』としてその都度纏めてきました。  植生調査はどんなことをするのかということは『伐り株だより』を見て戴くと分かるかと思います。  当初の4年間はあの中に600㎡の調査区をつくり、毎月植物班の方々と調査をしました。時には雪の中でとか、蚊に刺されながらとかいう事が有りました。最初の4年間の調査で論文を一つ書き、その後も年に4回植生調査をやってきました。私もこれほど熱心にやったのは多摩丘陵のもう一つの公園と生田緑地だけだったので、ここではいろいろのことを勉強させて戴きました。  植生調査のやり方ですが、まず調査区を決める。何時でもその中でやる。その中にどんな種類の植物が出て来るかを毎月毎月調べ、記録すると言うことです。私一人ではとても 長続きしなかったのですが、植物班の皆さんに「あれが無いわよ」と言うと一生懸命探して戴いて記録を取り続けることができました。  皆さんのお手許にその調査の資料がありますが、調査をする時にその樹林の中で一番高い所が高木層、その次が亜高木層、低木層、草本層と4つに区分します。T1が高木層、T2が亜高木層、Sが低木層、Hは1m以下の草丈の層という分け方です。  今回のような調査をやる時には、元の林がどういう林だったかをキチンと把握できていたらよかったのですが、私が教えられた時には既に伐採されていたので伐採前の調査資料がありません。仕方がないので隣接の林の中を調べて、前の状況を想像して調査を始めました。  伐採は1998年12月です。公園の中なので景観を考慮されヤマザクラ、コナラとか何本かを残されていました。残す率がどのくらいかと言うと植被率の10~15%位。それは何処でも残しています。沢山残すと夏には日陰となり後の萌芽が成長しない。最高15%位残されるようです。ここではヤマザクラ、コナラ、クマノミズキ、ムクノキ等が残されました。面積1200㎡の中の割に緊密と思われる所600㎡に調査区を設けて杭を立て、トラロープを張って戴き、区域を限定しました。  お手許の1枚の紙になりますが、第1期というのは誰が見ても丸坊主という草ッ原の時期です。草本類の繁茂です。伐採跡地に1年間で143種の草本植物が一斉に出ました。夏の時期には植物班の皆さんの中に入るは嫌だと言う人が出るほどに草が繁りました。その繁った草の内容をみると元々の林の植物以外に飛んできた物や埋土種子(埋もれた種)から発芽した植物とか色々と出て来ました。何処の伐採跡地でもそうですが、その時に帰化植物が非常に繁茂しますが、その時の帰化率を計算すると18%、2割くらいは帰化(外来)植物が出てきました。それが出ることによって植生回復がうまくいくと私は評価をしているのですが。 そういうものが一斉に出て植被率が70%位になると土壌流失が少なくなります。最初に外来植物が出てきたから抜こうというのでなく、それも何かの役をしているという事です  土壌流失が抑えられると同時に乾燥を防ぐという役割も果たしていると見ています。  冬になると1年草の外来植物は枯れてしまい、また、丸坊主的な景観に戻ります。それが第1年目です。  第2期は幼生の低木繁茂期。実生、埋土種子から出たヒメコウゾ、ヤマグワなどが沢山でて、これで再生が上手く進むのかと思いました。また、この時期には刺の有る植物が沢山でて長袖、軍手無しには中に入れないという状況が続きました。第2期の時に公園事務所の方に最初の下刈りをして戴きました。手刈りで10人がかりで1日かけてやって戴きました。その2年後の2003年には雑木林を育てる会の方に刈って戴きました。この時は600㎡の中は前の時ほど繁茂はしていなかったと思います。  第3期、2004年以降ですが補植された苗がどんどん成長する時期になりました。萌芽も成長期に入りました。後で、どれくらい成長したのかは現地で見て戴きます。  第4期になるとコナラ、クヌギが亜高木層にまで達しました。アズマネザサの丈は低くなりました。帰化率が1~2%に低下し自生植物が大半となる時期にさしかかっています。  私も、年4回の調査は続けようと志は高かったのですが大分怠けてしまいました。昨年の9月の調査時点では草本層の種数が41種と非常に少なくなってきました。一時は140種以上あった草本層ですが、ぐっと減っています。  樹高の方をグラフで見て下さい。補植されたコナラ、クヌギの成長が大変良く、2003年の時には5~6mに成長していました。今は8m位に成長しているのでしょうか。それぞれの木には番号を付けて樹高を測っています。  以上、経過について述べました。

【白澤】表ではコナラは萌芽しなかったのですか。

【藤間】表は4m以上の木です。実はコナラも萌芽してるのですが、4mに達していないのです。  補植したものはどこから持ち込まれたか分かりませんが、地域の遺伝子が保存されていないということで大きくなってはくれますが。生田緑地の遺伝子を残すということでは大きな課題が個々には残っています。  補植された木がどんどん大きくなると元々の萌芽された木の成長が抑えられて成長がよくないし、途中で随分と枯れました。

【倉本】北部公園事務所にうかがいます。伐採をした目的、どういう林にしたいと思われたのでしょうか。伐採の目的などの記録は有りますか。

【堀江】一定の考え方に基づいて体系的にやっていくことが本来は必要と思いますが、そのような考え方が根付いたのは10年位前のことで、やった時には意志があったと思うが、ただ伝わっていない。どの段階かでは資料は残っていたと思うのですが人事異動や施策が変ったりで、それが上手く活かされていない。我々の業務も色々な方面からやってはいますが今も活かされているか、今の施策に活かされているのかというと違う。個別にはやっているが目的にてらして今の皆さんの活動に結びついていない事も多いです。

【倉本】折角、ここまでの調査がされているので最初にどういう目的を持って何をしたのかという記録がちゃんと残っていると良かったですね。

【堀江】勿体ないですね。

【岩田(臣)】看板が立っているということは、看板は当初からあったのですよね。普通萌芽更新を目指す時はどういう時にやるのでしょうか。

【藤間】萌芽更新は失敗だったという評価は出来なくもありません。

【吉田】お手伝いをしている私達もどういう目的を持ってやったのか分からないで手伝っていました。当然、あそこに有る看板の様に更新をして、何年か立てばもとの雑木林になると思っていました。昔、炭焼きが行なわれていたような雑木林に帰ると考えていました。  だから、『先生、あれは失敗ですね。』と言ったのですが先生は『いえ、失敗ではありません。』と仰って、目的が何だったのか私にも分かりませんでした。

【岩田(臣)】先生のお話によると同時補植をしたために、補植した苗が萌芽を邪魔している。

【吉田】見ていて、気がついたことは木が古かったと思うのです。途中で出てきたものが弱くて、風が吹くとポキポキ根元から折れる。木に元気がないから折れるのだなと思いました。

【藤間】補植の目的は私も分かりませんが、かなりの数が植えられています。単木補植と3本纏めて植えられたのと。今でもその後が残っています。此処よりも3年前に横浜市の公園で伐採されました。そこは樹齢38年位でしたが、そこは補植無しで8m位の亜高木林になっています。そこでは萌芽率がとても良く80%位でした。ここは50年経っているからうまくいかないだろうと考えて、補植をされたのかなと思いました。

【吉田】伐るのはどの段階で知ったのですか。私は伐る所は見ていないのですが、高く伐った木が有りましたよね。鹿の食害を防ぐ為にあの高さで伐ったのだろうと言われ、ここには関係ないのに実験で伐ったのだろうかと理解したのですが。

【岩田(芳)】私が多分この中では一番よく経緯とか、目的とかを職員の方に聞いていると思います。あそこは本田さんが工務班の係長の時に計画が最初に持ち上がり、実施されました。計画は武井所長の時と聞いています。本田さん曰く「生田緑地の中の木は、(その当時で)萌芽更新されて50年は経っている。生田緑地は将来的にも雑木林として残す。」と言われていたように記憶しています。東高根はシラカシ林なので生田緑地は雑木林を、将来的に川崎市として残して行かなくてはいけない場所と位置づけて、萌芽更新をする為には1ha必要と業者さんと計画したようです。そこだったら一つの纏まりとして出来ると。萌芽更新の実験地と位置づけられていたと記憶しています。

【吉田】そもそも、萌芽更新をやりましょうというのは藤間先生の希望じゃなかったんですね。倉本先生がどういう目的でと、藤間先生に聞かれても先生は知らない訳ですね。 藤間先生が希望で音頭を取られたとか。

【岩田(芳)】藤間先生は北部公園事務所の本田さんを訪ねて、萌芽更新地の調査をしたいと申し込まれて、本田さんから科学館、調査団と相談をしてくれと言われ、調査団に入って植物班と一緒に調査を続けられました。  それと、補植を何であんなにいっぱいしたのかは分かりません。多分業者さんが儲けるため??     (少し前から大笑いとなり聞き取れず)

【岩田(芳)】それと大きな木を何故残したのか、本田さんに聞いたところサクラは伐りにくかったとか、完全に丸坊主にするのは忍びなかったとか、言っていました。その同時期に調査団で調査をするのだったらやっても良いよ、協力するよという話しが有りました。 藤間先生が調査をすると決まった時に方形区を取り易いように10mだったか20mだったかの杭を打ちましょうとか、色々と便宜を図って戴きました。

【吉田】10年経って真相がわかった...。

【岩田(芳)】凄い情熱を持って「生田緑地の中の木を見ているとこういった実験区が必要。将来的にこの山をどうするのかを考える必要が有る」と語っていました。彼が異動になると同時に情熱を持って語る機会が無くなってしまいました。

【藤間】私が10数年通っている横浜の公園(四季の森公園)ですが、公園を作る時にゾーニングを考えて、ここを何にする、あそこはどうする。その為にこういう管理をするとキチンと決まっており、そのマニュアルに沿って管理をしています。どうするかを決めてあると管理が楽ですし、職員が転勤になってもマニュアルに沿って業務が続けられます。  それで、目標樹林は何かとなると、遅ればせながら皆さんで考えてみて下さい。

【岩田(芳)】今までは実験だったということですね。

【藤間】そうです。もう、実験の段階は終わりました。あそこをどうするのか、あのまま放ったらかしていると下の写真のような事になります。上の写真は横浜の写真ですが、低木も含めてみんな伐っています。毎年、職員の方が一人で機械でやっています。10月頃になると綺麗に刈ります。ここで草本層を調べてみると大体75種類位出ます。

【小泉】伐った方が出るというのは陽が当たるからですか。

【藤間】クロモジやウグイスカグラがあっても、それも機械で刈られます。  真ん中、3の写真は川崎の黒川の写真です。ここも毎年下草刈りをされています。ここは落葉かきをしっかりとされています。ここも草本層で80数種類でます。しかも、きれいな花の咲くものがたくさん出てきますので、川崎市で一番の林だという噂が飛び交っています。目標とする林はと言うことで3つ書きましたが、もう一つ書き忘れました。昔ながらの伐採をしてという林です。ある部分だけ、また皆伐をしてもう一度萌芽がうまくいくかどうかをみるというのも有るのではと思いました。

【白澤】萌芽更新にはまだ小さいのでは。

【藤間】植栽された木は今朝計ったところ幹周りが44cmあり、直径12cm位です。昔横山さんが仰るにはね。

【岩田(芳)】横山さんの叔父さんが仰るには、この辺りでは私の腿より細いうちに伐ったと仰るのですよ。腕よりも太かったと。8年から10年というのは聞いていたので、先ほど藤間先生が仰った様にもう一度皆伐というのも面白いと思います。

【白澤】どうして小さい時に伐ったのですか。

【岩田(芳)】生田緑地は場所によってとても急峻なので運び出すのには細い方が楽だとか、管理の知恵、生活の知恵が入っていると思います。

【岩田(臣)】昔やっていたくらいのタイムスパンで萌芽更新を繰り返す区域を設定しても良いのではないかという藤間先生の提案ですね。

【吉田】では炭焼き窯も作って。     (この辺私語と笑い声で聞こえず)

【山口】今の林の植栽のコナラとかで、やってみる。

【藤間】それも面白いかなと思います。

【吉田】この間炭焼きの体験に行ってきたのですが、あんまり大きいのは良いとか、悪いとかという以前に運ぶのが大変で釜まで運べないんです重たくて。結局機械を使うしか無いですが、細いほうが扱いよいです。

【山口】13年から15年で萌芽更新と言われていますが。コナラの方が早いのですか、クヌギの方が早いのですか。

【藤間】何方か分かりませんが、場所によりけりだと思います。このくらい(7~80cm位)に伐って子どもでも外に持ち出せる。いまの成長だと丁度いいですが、大きくなるとどうしょうも無いです。

【鈴木】処分の方法ですが、炭焼きも難しいのでチッパーを何時かは買いたいなと思います。普段太い枝を剪定しても使えますし。将来、何時か、流れに合わせて行政側も準備できればと思っています。少なくとも森に還元できます。  炭ということもありますが、全部が全部燃やせる状況には無いと思うので。そういうサポートも出来ると思います。

【岩田(芳)】本来は木はそこで朽ちてもらうと朽ちるまでの間に多くの昆虫が発生しますと雛倉さんのかわりの発言です。入ってもらいたくない所に進入禁止も含めてカントリーヘッジもいいですから、使えない枝の処理も含めて、併用できると良いです。

【倉本】そういう所も必要ですが、逆に有機物が還元されない貧栄養の所も必要なので全部の所に有機物を施すというふうに考えなくてもよいのではと思います。

【藤間】植物の養分が少ないという状況は。リター層(落葉層)がとても厚いので、酸素の補給も出来ないし、種子の供給も出来ないという状況です。その辺を考えて戴くと良いかなと思います。

【雛倉】環境は一つの価値観でいじると危険なので、貧栄養の場所とか木を伐ったら土に戻すような使い方もあっても良い。柔軟に対応をしていったらいいのではと思います。枯れた木と地面に積んである木では微妙に湿度が異なり発生する昆虫も異なります。立ち枯れは危険だから伐りましょうと行って伐られますが、園路の側の人に危険なものは伐らざる得ませんが、立ち枯れの木にはキツツキ等の野鳥も来ますから、奥の人的に影響の無いものは残してもらいたいです。一つの価値観に縛られないで柔軟にやっていければいいのではと思います。

【倉本】そのいろんな価値観の配置というのが思いつきではなく微地形等に対応して、元々上の方が有機物の堆積は少ないので。今は植生だけのゾーニング図を作っている訳ですが、もっといろんな生き物に配慮したゾーニング図が作れて..。ちょっと夢なのですが。

【山口】実験という意味では管理方法を少し変えてみる。出るものがそれで多分変わって来ると。

【吉田】何時もおかしいと思うのは要らない木は伐るということです。要らないものは芽がでたら抜くことをなぜしないのでしょうか。ある程度育ててからでないと駄目なんでしょうか。例えば、アジサイ山でマテバシイを伐りましたね。その後、ワアッと萌芽してアジサイに陽が差さない状態まで放置されました。あれは出た時にやってれば何のことは無かったと思って見ています。大きな木は伐るに忍びないです。最初から計画が決まっていれば最初から小さいうちにやろうという事になるのではと思うのですが。

【岩田(臣)】その辺は広い範囲で誰がどうやるのかまだ決めていない、決めていいのかもわからないので。

【吉田】正しくはというか、森の管理の正しいのはどれか分かりませんが、ある程度大局的に正しく見られる人がいて、そしてある程度このようにしましょうという人がいないと話し合っているだけでは進まないですね。

【岩田(臣)】まだまだ、人が足りないです。これから少しずつ進めていきたいと思います。
それではこれから現地に行って、現地を見ましょう。
 ・・・現地に出かける前に17人全員の自己紹介・・・
 ・・・現地の見学
先生からのお話と質疑応答の後、萌芽更新地(A06)に皆で行き、樹林の中に身を置いて、今度は体全体で樹林の様子を感じ取り、こんな樹林になったらいいなというイメージを膨らませていきました。 皆伐とはいいながら伐採せずに残された直径20cmを超える樹木も何本か見受けられました。伐採と同時に補植されたという樹木のうち単体て植えられたものは直径8~10cmに成長し、昔行われていたような薪炭利用のための伐採には適期になっていました。3本植えで補植されたものは成長が悪く、枯れているものが多く見られました。萌芽更新を目論んで伐採されたコナラは数本の萌芽を立ち上げたところで枯れていました。 室内での先生のお話にあったように落葉層が厚く、子どもたちの調べでは最大17cm、平均で12cmでした。この落葉層のためか、2006年の調査では草本植物が60種、2007年の調査では41種に減少しつつあり、種豊富性が低下しています。



寒い日でしたので、北部公園事務所に戻り、目標植生とこれからの植生管理の進め方について話し合いました。

【岩田(臣)】萌芽更新地の将来。目標植生についてと今年から来年にかけてやって行ったら良いと思うことについてのご意見を戴きたいと思います。

【藤間】10年の間、沢山の方々の協力を得てやってきた所です。これからはもっと観察ができるような、例えば、そこで地球温暖化、持続可能な活用、アンダーユース等のことを考える場としていけたらよいと思います。

【吉田】倒れかかって他の木の妨げになっている木は整理をして、明るい雑木林に出来たら良いのでは。  元々の木ではなく補植の為に植えた木が育ってきたら、再生させたい木が上手く育たないということは有るのかです。

【藤間】あそこはそうです。

【吉田】出てきたものに勢いが無く、どちらを活かすかが問題となって来ています。若い木を活かして若い林にしていくのが理想的なのでしょうか。

【岩田(臣)】更新の仕方として、一様に刈るのか、若い木を残すという選択肢もあるのかもしれないが、低木だけになります。

【吉田】あそこでは若い木がよく育っていた。若い木は人間と同じで元気がいいんだと思います。将来有望という印象を持ちました。 (この日参加した里山の子どもたちを指しての発言)

【内藤】ありがとうございます。  (大爆笑)

【吉留】林床植物を見たいという立場からは、落葉かきとアズマネザサを伐ることが必要と思います。

【佐藤】先ほど藤間先生が仰ったように高い木から低い木までいろんな木が見られる観察の場所。明るい、管理された雑木林になると良いのではと思います。

【白澤】枯れた木が多い、下草刈りをやるのだったら毎年とか、3年に1度とか決めて欲しいです。

【小泉】いろんなものが見える観察の場が良いと思う。小学生など楽しみながら観察でき、自然について身近に考えられる環境として活用されていることがよいです。個人的な感想は林のリター層がふかふかで気持ちよかった。あそこにバタッと寝ころべる場所が有ったらいいなと思いました。

【鈴木】岩田さんに言われるまであそこがどうして皆伐されたのか分かりませんでした。そのことを踏まえて現場に行って見直して、何でこうしたのかが分かった気がしました。雑木林の循環を描いている案内看板が有るが、作る時に雑木林の移り変わりを体験できる場所として公園側としては整備をしたのだと観察ルート、案内看板から感じました。  現地で中に入ると他の生田緑地には無い林で、林の中も明るく、それだけで愉しい、何となくワクワクする。折角の場所なので、まず下草刈り、落葉かき等の管理された雑木林を目指してみるのも良いのではと思います。

【山口】植栽されているものと、萌芽更新のものと両方有ったが、林が若返っているという点では成功をしていると思います。  樹高5~6mの10年位の林は生田緑地の中には無いので林の成長を見る観察ポイントとしては良いのでは。ササ刈り、落葉かきの管理をしているとまた、違う植物が出て来ると思います。黒川の方の管理をされた林を目指してみると面白いと思う。リター層が厚いので管理を考えて見るのも良いのでは。

【堀江】今、我々がこうして生田緑地の管理を考えているが、何年も前に新しい試みが生田緑地で始まっていたということは我々の注目すべき事だと思います。  その試みをどうやって我々の活動に引き継いでいくかが懸案事項になると思うので、引き続き観察し、実験していくポイントと位置づけて、生田緑地全体の管理の実験場として活動をしてみたらどうだろうかと思います。

【岩田(臣)】さて、里山の生徒にも意見を聞きます。どういう林にしたら良いですか。

【山内(冴)】ササが凄く高かったのでびっくりした。一番高いのが 2m85cm。低い方の平均的なのは 84cmありました。

【山内(春)】ササがたくさん生えていた。小さい方が若いと思っていたら、小さい方が年代が古くて、一番大きい方のが一番若いと言われて驚きました。

【内藤】実年齢12歳、精神年齢は5歳児のいうことなので真剣に聞かない方がいいと思うのですが、大人の考え方はできないのですが、東京のような大都会の木が全然ない所とは生田緑地は違う所なので、そういう所と比べると癒されると思う。なるべく人工的なものは減らし、自然のままを活かした方が良いと思います。

【岩田(芳)】落葉層の深さも発表して下さい。

【内藤】萌芽更新地の上の下(真ん中の歩道上方)の平均は13.5cm。上の上は平均9.25cm。萌芽更新地下の上(歩道下方)平均12.37cmです。 ・・・皆さん落葉層の厚さには驚き個人的会話で盛り上がる。・・・

【岩田(芳)】1つの場所につき4~5カ所のサンプルをとり平均を出しています。一番深い所も発表して下さい。

【内藤】17cmの場所が有りました。 ・・・北部職員は全体の落葉量を計算をする。・・・

【上家】どういう林が良いかは勉強不足で分かりませんでした。この森がもともとの地域の物が残っている森なのか、周辺と同じような動植物が見られる森なのか、それはこの地域でいうとどの位の年代に当たるのか分かりません。過去の事例が成功した森としてサンプル的な森とするのがいいのかなと...。将来どのような森が良いのか分かりませんでした。

【雛倉】多くの人が観察したりする場所とイメージしたのですが。野生の草花が林床に咲き乱れる明るい雑木林とイメージしています。生田緑地は他の公園緑地に比べ地形が急な所が多い。萌芽更新地は生田緑地の中ではなだらかな場所でそういった場としては相応しいのではないかと思いました。  現場を歩いていろんな方が言っていたが、落葉をかくと花が出るが取られるのではと。落葉は森の栄養源ですから、かいたら落葉溜めに入れて肥やしにし、土壌の乏しい所に入れるとか。栄養源ですから有効に利用したいです。  アズマネザサも背後のすり鉢状の急斜面等は土壌浸食が無いように残したほうがよい。

【倉本】子ども達が長さが計れるだけでいろんな観察ができました。それだけで自然についていろんな事が分かっったというのは凄く感心しました。ちょっとしたことで皆が観察できる林になるのだなと感じました。それは子どもたちにはすごく想像力があるからできるのかも知れないけれど、大人にも少し働きかけをすれば出来るかもしれない?出来ないかも知れませんが。そういう点では観察が出来る林にすることと、これまでやってきた調査は最初と頻度は違っても続けることが大事だと思います。  見せるという点では木は大きくなっていくので全体の半分づつを何年かに一度更新をして、若い部分と、ある程度大きな部分とが何時も見れるようにしておくとか、次ぎにやる部分や時間軸を考えて次ぎに何をするかを考えるのが良いかなと思いました。  それと、1200㎡を単位として考えるのではなく、もう少し広いエリアでそこをどうするのかということを考えていく必要もあるのではと思いました。  長い間調査をされてきた皆さんのお蔭でいろんな事が分かりました。ありがとうございました。

【岩田(臣)】皆さんの意見をうかがって基本的には、あそこは明るい雑木林という方向の管理をしながら考えていく。将来的には観察に使えるとか。萌芽更新の実験林と言うことで計画し、看板も作りやってきたということ。今後もその延長で、それを否定せず、管理内容が変ったとしても、その情報を掲示板等で知らせるような形にし、管理をしながら皆で観察をしていこうというのが、皆さんの意見を整理したおおよその纏めと思います。  ただ、その中で、管理の仕方は幾つか有りそうです。それは1200㎡をある程度区分けしてここはこういう内容の管理をする、ここでは若い木を優先して残し、大きいのは伐るとか、昔の里山の管理に近い形の管理をする(全部伐ってどういう出方をするか見る)とか。ゾーンを分けてやっていく必要がありそうと思います。となると今決めるのは大変そうなので次年度の活動の中でやれる様に調べながら整理をしたいと思います。  緊急性が有るのは、先ほどから皆さんの発言に有るように落葉層が厚いので、今年度落葉かきをやった方が良い気がしています。皆さんのご意見を戴きたいと思います。

【藤間】里山で落葉かきをする時期は、フワッとしていると量が多いので、2月~3月頃に今まで伝統的な落葉かきをやる所が多かったようです。全て取り除くのではなくて、クマデである程度残しながら土の表明を引っかく様な作業です。それで、3月頃にやられてどこかに落葉溜めを、少し立派なのを作って戴きたいです。以前に林内整理で作っていただきました、その時の物は1年で何処に有るか分からない、状態になっり、堆肥どころではなかったので。りっぱな落葉溜めを作っていただくとそこでカブトムシ等が大発生をすると思います。ある公園では沢山発生したのですが、業者にごっそり盗まれましたが。落葉かきでしたら3月頃までに出来るのではないでしょうか。

【岩田(臣)】それでは3月ぐらいに落葉かきの市民部会を計画させて下さい。

【倉本】部分的に残して管理を変えて見るのも良いと思います。それと、アズマネザサを今の状態で残してかくのですか。

【岩田(臣)】全域ではないですが、ササ刈りをある程度の面積だけやっておくというのも良いですか。いかがでしょうか。

【白澤】根本に光をあてるという意味ではササ刈りもした方が良いと思います。

【岩田(臣)】ゾーン分けをして、場所ごとに管理方法を決めておいて、それを前提に今年度は何をするかを決めますか。

【倉本】余り細かく沢山に決めるのは、観察の対象が本来の里山と違った箱庭的な里山を観察することになります。

【岩田(臣)】方形区を決めましょう。

【藤間】私が横浜でやった時には10×10mでやりましたが、面積がすくなくて結果がきっちりと出なかったので、最少でも15×15m。20×20有ればと思います。

【岩田(臣)】やった後で測り直せばいいですね。3月までに....。

【岩田(芳)】大きく半分と半分でやって、後で測り直しても良いですね。

【吉田】皆さんの希望を集約すると学習の森に近い、入るのも自由な森にしたい気持は分かるのですが、それは理想であって、咲き出たものをどうするかというとあそこは人の目のいかない所なので確実に無くなります。周辺部を残して刈るのはどうでしょうか。  分かっている人たちは出入りも出来るけれど、何気なくシャベルを持って来る人達は中が綺麗になっていることが分からないという状態。いつも植物が無くなるのが一番心配です。例えば生田緑地から帰る時に沢山リュックから枝が出ている人がいます。それに注意をするのは私たちには出来ません。腕章も何も無しで注意は出来ません。

【岩田(芳)】ササ刈りおじさんのことで北部公園とも大分話をして腕章貸し出しという事も今やっていますが。

【吉田】明らかに透明な袋の中に草花が一杯入っていて見えても言えないです。

【岩田(芳)】実は注意をしたのです。東口から枡形山頂に向かう道で注意をしたらおじさんが袋を投げつけて行きました。中には根のついたスミレがいっぱい入っていました。

【岩田(臣)】夫婦でスミレを片っ端から取っていたので、それは置いて行って下さいと注意をしたら投げるようにばらまいて行きました。

【岩田(芳)】生田緑地憲章の看板を入口毎にちゃんとやって戴いて、持ち込まない、持ち出さないのルールを明確にして戴くと入口の看板を見ましたかと言えます。

【吉田】真面目に気持ちがいいとか、何が生えているとかだけの大人じゃないという事が問題です。悪い大人がいて、自分の家の庭に持って行ってしまいます。貴女達の将来の為にちゃんとしないといけないですよね。  保護は考えてやらないと生田の山から何もかも無くなってしまいます。

【岩田(臣)】基本的に誰でも自由に入れるよりは、入りにくい環境は残しておかないといけないと思います。最初に萌芽更新をした時も下からはカントリーヘッジで入りに難くされましたように。そういう条件をつくる事が必要と思います。

【吉田】若い人たちはやたらに持って行っていいとは思っていないです。

【岩田(芳)】年配の人が問題です。

【吉田】昔は沢山有ったから、綺麗なものが有ったら山の恵みだという感じで何の抵抗もなく持って行かれる。しめたと思われる。

【岩田(芳)】貴女達(里山の子)は絶対にやらないと思いますが、おじさん、おばさんには平気な人がいます。

【岩田(臣)】先ほどの例は業者的な人で、それを何かに使うのだと思います。生田緑地にはそのような人も沢山出入りしています。入り難くしても入ってきます。見つけたら注意をしていますが、一人の時はやらないで下さい。  それで、先ほどの話に戻りますが、ササ刈りまでやった方が良いという意見が強いのでしょうか。シュート的に長いササが伸び始めていますから一度実施した方が良いのでしょうか。ササ刈り、落葉かきという方向で良いですか。それでは3月迄にやれるように計画をして案内を出させて戴きます。

【鈴木】落葉溜めの大きさはどれくらいを考えていますか。

【藤間】そんなに大きく無くても良いとは思います。

【吉田】山の斜面の上に作るのか、下に作るのかで降りていく養分が違います。普通はどうなのでしょうか。

【堀江】面積×深さで立米数が出ます。どの程度やるのかで落葉溜めの大きさは違います。

【雛倉】下に作った方が作業的には楽です。たいていの所では下の方に作っていますね。

【岩田(臣)】特にここにして欲しいというご意見がなければ3月までの間に決めて行きたいと思います。

【白澤】ササも入れるとかなりの量になりますが。

【堀江】落葉の量は減りますよ。

【藤間】入れたらそのままでなく、体重の重い人が踏んづけるとペチャンコになります。  ササはカントリーヘッジのように。

【岩田(芳)】違う話です。本田さんたちから聞いたのですが、萌芽更新中という標識や看板を沢山作ったのはここで何が行なわれているかを散策者に分かるようにする。知ってもらうことでクレームが付かないようにという配慮でした。大々的なクレームは数件しかつかなかったと言っていました。何もやらないであれだけのことをするとクレームが 沢山来るのに今回は殆ど無かったと言っていました。

【白澤】でも、あれだけ残していると。

【岩田(芳)】怖くて全部は伐れなかったのだと思います。特にサクラはクレームが怖くて残したのだと。

【藤間】そうです。看板を立てないと某公園では副知事にまで直接クレームが行ったという例があります。

【岩田(臣)】そろそろ時間ですので。作業方法などは作業日迄に明確にしたいと思います。

【藤間】藤沢市では市民活動に対して道具類等で積極的にサポートをしているが、川崎市ではどうでしょうか。

【堀江】植生管理協議会市民部会には力を入れていますので、ある程度活動方針が決まって、こういう道具が必要ということになれば対応するつもりでいます。ただ、今のところは始まったばかりなので。北部のスタップでも考えています。今も、位置情報を把握して植生調査の中で使って戴き、プロがやる以上に正確なものにしょうと考えています。

【岩田(臣)】次回の連絡
    ・2月、おし沼峠の活動
   ・アズマネザサの採集
    ・伐土の緑化
    ・コナラの実生苗の採集
   日程未定
    ・七草峠下の植生管理(植物班、作業班)

【倉本】北部公園にお願いが有ります。やったことが自然に対して大きな影響を与える事業、工事等はどういう目的で、何を行なったかということを記録をする習慣を持って戴きたい。工事や、委託の執行とは直接関係無いが先々役に立つ状況となると思うのです。台帳を作って戴きたいと思います。

【岩田(臣)】もう一つ報告事項があります。 野鳥の森に伴う、地形の改変と樹木伐採は野鳥の森の湧水量の著しい減少が懸念されるので、多摩区建設セイターの方にはポンプ施設を設けて、 流れが枯れないようにして欲しいというお願いをしています。 参考事例として鈴木さん、山口さんにご同行を戴いて、多摩区建設センター職員と一所に横須賀YRP水辺公園と三浦市名向小学校の水辺ビオトープの見学に行きました。


その結果、萌芽更新地としての位置づけを継承し、管理された雑木林として観察会等に活用できる明るい雑木林にすることとなりました。
樹木伐採等の植生管理は次年度実施とすること、具体的な伐採方法等の詳細については事務局が計画することとなりました。
また今年度の措置としては、笹刈りと落葉かきを実施することと、日程調整は事務局に任せてもらうこととしました。


市民部会の活動でも、奥の池の外来生物駆除作戦は、里山の自然学校の子どもにも参加してもらいたいと思いましたが、目標植生を考えるようなプログラムには参加する子どもはいないものと勝手に決めていました。ですから、突然、少し遅れるとの電話をもらった時は驚きました。うれしいサプライズでした。
子どもたちが、大人と一緒に自然を保全する活動に参加するようになることは里山の自然学校の目的にもあることであったと後から気づかされました。
動物だから対象になって樹林では対象外と勝手に決めていたのは誤りだと気づかされました。
でも、これからは事前に申し込んで下さい。よろしくお願いします。

市民部会終了後、岩田は、里山の自然学校の子どもたちのお弁当につきあい、谷戸に降りました。
田んぼには氷がはっていて、子どもたちは夢中になってしまいました。
子どもたちが身近な場所で天然の氷に出会う機会などはもう無くなりつつあるのでしょう。
驚いたのは、氷の下に体長6mm程の水生甲虫がいて、慌てて底に沈んだ落葉の下に隠れました。


・・ 生田緑地植生管理協議会 ・・ 川崎市北部公園事務所 ・・
生田緑地植生管理協議会市民部会事務局

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