川崎に生き残ったアナグマ



かわきた第235号(2011年11月発行)掲載 川崎の自然をみつめて
川崎に生き残ったアナグマ

かわさき自然調査団 岩田臣生

 1983年に始まった第1次川崎市自然環境調査では川崎市域に棲息している哺乳類について調査し、ジネズミ、ヒミズ、アズマモグラ、ヤマコウモリ、アブラコウモリ、ノウサギ、アカネズミ、カヤネズミ、ハツカネズミ、クマネズミ、ドブネズミ、タヌキ、ホンドギツネ、イタチの14種を報告しました。しかし、その後の継続調査はなされていませんので、20年以上経過した現在では変化していると思われます。また、この調査では確認できなかった種もいると思われます。例えば、ここに取り上げたアナグマやハクビシンなどのような夜行性の種です。
 かわきた217号に書いたように、2008年に環境省モニタリングサイト1000里地調査の一般サイトに生田緑地が登録され、かわさき自然調査団が生田緑地の中型哺乳類について調査しています。この調査も既に3年が経過し、開始当初から多数撮影されていたタヌキ、ノネコ、ハクビシンの他に、少数ですが、ネズミ類、イタチ、アナグマ、アライグマも記録しました。
 イタチは、神奈川県でも東京都区部でも準絶滅危惧種に選定されているので、2008年10月に撮影された時は「まだ生きていたんだ」と喜びました。その後も、谷戸の保全活動をしている時にそれらしき姿を目撃したり、湿地や田圃の泥の上に足跡を見つけたり、園路に糞を見つけたりしています。田圃ではアメリカザリガニを捕食してくれているとも思われ、生態系の上位捕食者が健在でいることを嬉しく思っています。しかし、カメラを設置しているような場所にはなかなか出てきてくれません。
 アナグマは、黒川にはいるという話を数人の人から聞き、黒川なら町田方面の緑地とのネットワークがあるので有り得ると思っていましたが、まさか生田緑地で撮影されるとは誰も予想していませんでした。それは、アナグマが森林生の哺乳類だからです。東京都区部では絶滅とされており、大都市の市街地に棲息できる生物ではありません。 撮影された回数は少なく、2010年7月、2011年6月に撮影された2枚だけですが、専門家の意見でも市街地の中を移動してきたとは考え難いとのことで、昔から棲息していたものだろうと推察しています。どのように生活しているのかは不明ですが、生田緑地に棲息している可能性が高いのです。
 このことは市街地に囲まれた生田緑地の自然を考える上で非常に大きい意味を持っています。私たちは生田緑地を里山として保全活動を進めていますが、アナグマが棲息しているということは、里山としての高い質の自然が残っていることを示していることだと思っています。

2010年7月に撮影されたアナグマ 2011年6月に撮影されたアナグマ 2008年10月に撮影されたイタチ

この文章は、かわきた第235号 2011年11月発行に掲載されたものです。
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