セミヤドリガ セミヤドリガ科 Epipomponia nawai (Dyar, 1904) チョウ目(鱗翅目)マダラガ上科セミヤドリガ科セミヤドリガ亜科セミヤドリガ属セミヤドリガ セミヤドリガ科のガは世界で40種程度が知られいますが、その殆どはウンカ科やハゴロモ科などに寄生していて、 セミに寄生する例は世界的にも珍しいものだそうです。 明治31年(1898年)、「昆虫翁」として知られる民間の昆虫研究家、名和靖(なわ やすし)は岐阜県養老山でヒグラシに付いた奇妙な幼虫を発見し、 養子の名和梅吉がこれを飼育したところ、繭から黒っぽい地味な蛾を羽化させることができました。 この蛾はすでに明治25年(1892年)に岐阜県金華山で採集していたもので、それがセミに寄生する種類であることを知りました。 そして1903年、名和昆虫研究所発行の雑誌『昆虫世界』に「セミノヤドリガ」という名前で美しい彩色図版とともに掲載しました。 この報告を見た米国の H.G.Dyar という学者が、標本を取り寄せ、1904年に Epipyrops nawai の名で新種として記載しました。 この当時米国留学中だった梅吉も、この珍蛾を新種として発表する準備をしていましたが、Dyar の論文の方が早かったため機を失いました。 現在、和名は『日本昆虫總目録(蝶蛾之部)』(1905 松村松年)に始まるセミヤドリガが使われています。 分布は、栃木県から新潟県を結ぶ線より西の本州、四国、九州(南部を除く)、韓国、台湾。 平地から低山地の日中でもやや暗いような老熟したスギ・ヒノキの植林内などでセミに寄生している幼虫が多く見られ、 成虫も同様の環境を飛び回りながら産卵するものと考えられています。 卵は樹皮下に産卵され、セミの翅の振動を感じて孵化し、セミに取りついて寄生生活を始め、2週間程度で終齢(5齢)となり、 糸を出してセミからぶら下がり、木や草に移動して繭をつくり、1週間程度で羽化します。 成虫は何も食べずに数日で死んでしまうようです。 次の写真は、2008年8月23日の里山の自然学校《夏の里山》で生田緑地を歩いている時に見つけたもので、 この日は同様にヒグラシに寄生しているものを数頭見つけています。 写真/ ヒグラシの体表に寄生しているセミヤドリガの幼虫(2008/8/23 川崎市多摩区生田緑地で、岩田臣生撮影) ▲ 特定非営利活動法人かわさき自然調査団 |