里山の自然学校2012 第3回 プールのヤゴの救出作戦


里山の自然学校2012
第3回《プールのヤゴの救出作戦》

【2012/6/6 更新】

日時 2012年6月3日(日) 10:00〜15:00 曇時々晴
場所 稲田公園児童プール
参加者 A 酒見果歩、谷 実鈴、山根将聖
    B 大江田慧、山本来幸、山根早也香
    C 江口暁香、棟安恵万
    D 原田大雅、上野美紀、山崎慎悟(午後のみ)、八代舜太郎、駒松沙生
                                    13人
講師 藤間煕子、山本晃、岩田芳美、梅原和仁、神山歩未、鈴木志歩、岩田臣生

このプールのヤゴの救出作戦の舞台となっているのは多摩区にある稲田公園児童プールです。
このプログラムを始める切っ掛けは、2004年当時、このプールを管理していた川崎市北部公園事務所が夏の開業に向けて塗装工事をする準備を始めたところ、 プールの中にヤゴが沢山いそうだということが分かり、当調査団にどうすべきかについての相談があったことです。
早速プールに入って調査すると大量の藻、多分サヤミドロだと思いますが、これが水面から水底まで繁茂し、その中をヤゴが泳いでいるのが確認されました。 網ですくうと、簡単に、藻と一緒にヤゴが沢山採集されました。
自然の水域ではトンボのヤゴを確実に採集できるとは限りません。 ところが、ここでは確実に、簡単に、採集できそうです。これは、是非、子どもたちに体験させてあげたいと思いました。 しかし、この時はイベントとして行うには余りに時間がありませんでした。
この数ヶ月後に、当時の川崎市青少年科学館の梅原和仁館長から調査団に対して、子ども向けの事業をしてほしいという相談がありました。 これが里山の自然学校を企画するきっかけでした。 そして、その里山の自然学校のプログラムとして、そのまま放置すれば下水に放流されてしまうヤゴを救出してトンボにするための「プールのヤゴの救出作戦」を企画しました。
第1回目の2005年には、アカトンボ型 5,054、シオカラトンボ型 35、イトトンボ型 59、ヤンマ型 70、計 5,218個体を救出しました。
その後、救出されるヤゴは少しずつ減少して、昨年は合計で781個体でした。
今年5月29日に、このプログラムのための多摩区道路公園センターとの事前協議を現地で行いましたが、藻が少なく、水底に雲状に塊が見られるだけでした。 ヤゴはいるのだろうか、昨年よりも少ないのではないかと心配してしまいました。 ただ、ジッと目を凝らしているとギンヤンマのヤゴらしき姿が一つ、アカトンボらしき姿が一つ見えました。また、水面の上をアオモンイトトンボが3頭飛んでいました。
毎年、多摩区道路公園センター(当初は北部公園事務所)の職員の方には水位の調整で面倒をおかけしていますが、今年は6月1日(金)に排水していただきました。 モニ1000の哺乳類調査の定点カメラを午前中に設置してから稲田公園に駆けつけましたが、既に作業は終了していました。

当日は雨という天気予報だったため、雨の中の活動としての準備もしていましたが、結果的には、一時的に日が差して暑いぐらいの天気となりました。 でも、参加者は午後から参加の1人を入れても13人と少ない人数での活動となりました。

はじめに活動の目的について説明した後、まずは、まだ水もヤゴが残っていた浅い方のプールから救出作戦を開始しました。 その間に、プールの排水弁を開けて、さらに排水し、水位を下げることにしました。


初めての子どもたちには、浅いプールから始めたことが幸いしたようで、水にも、そしてヤゴにも直ぐに馴れました。 浅いプールのヤゴを殆ど取り尽くしたところで、深い方のプールのヤゴの救出作戦に移りました。
深いプールは両端が浅く、中央部の排水口の位置が最も深くなっています。そこで、深い方のプールでも、まずは浅い両端の部分から活動を始めました。

深い方のプールではヤンマ型(ギンヤンマ)のヤゴが次々に採集されて、子どもたちは夢中になりました。

水深が丁度よい深さになったところで、排水弁を閉じて、全域での救出作戦としました。

お昼は炎天下のプールサイドを離れて木陰でお弁当を食べてもいいことにしました。

午後も、1時30分まで採集を続けました。


網を使う度にヤゴが入っていて、まだまだ残っていそうでしたが、採集活動は1時半で止めて、4類型ごとの個体数を数えることにしました。
採集しながら、イトトンボ型とヤンマ型は別にしていたので、子どもたちはアカトンボ型とシオカラトンボ型を分けながら数えていきました。

イトトンボ型とヤンマ型の個体数は神山先生が数えてくれました。

採集したヤゴは皆が少しずつ持ち帰り、自宅で飼育して羽化させてもらいます。
この飼育の仕方については、山本先生から教えていただきました。

最後に、救出したヤゴは全て秘密のポイントに放流しました。


今日の活動中に、ボールにイトトンボのヤゴの脱殻がついているのを見つけた子どもがいました。
トンボは水面で羽化することはできません。たまたま水面に浮かんでいたボールの上でイトトンボが羽化したようです。

この日の活動で救助したイトトンボは48個体でした。

イトトンボを持ち帰ったところ、次々に羽化しましたが、全てアオモンイトトンボでした。

ヤンマ型のトンボは全てギンヤンマで、救助した数は 123個体でした。

救助したシオカラトンボ型のヤゴは全てシオカラトンボで、582個体でした。 ただ、大きさに差がありました。

救助したアカトンボ型のヤゴは 3,842個体でした。

今回の救助作戦では、通常プールで見られる4類型の他に次の写真のようなヤゴが見つかりました。 図鑑で調べたところ、形状的にはオオヤマトンボのヤゴかと思いましたが、採集した3個体とも1cm程度と小さいこと、 オオヤマトンボがプールで産卵するのだろうかという疑問などもあったことから二人の専門家に尋ねましたところ、次の通りでした。
○茅ヶ崎市の 岸 一弘 さんから
「ご推察のとおり、オオヤマトンボのヤゴです。終齢幼虫ではありませんが、亜終齢かもしれません。 オオヤマトンボは比較的水面の広い池に産卵しますが、プールで産卵することもあるという一例ですね。」
(体長が1cm程度とお知らせし、幼虫期間について尋ねました。)
「体長1cmとなると、亜終齢の一つ前(n−2齢)というところでしょうか。 オオヤマトンボは夏から秋口にかけて産卵します。個体により成長スピードが異なるので幼虫期間にも幅がありますが、翌年の初夏〜夏に羽化するので、8〜10か月と いったところではないでしょうか。」
○神奈川県立生命の星・地球博物館の苅部治紀さんから
「そのとおりオオヤマトンボですね。プールで生息するのは珍しいと思います。そもそも神奈川ではオオヤマ自体が珍しいです。」
オオヤマトンボ幼虫
この日、救出できたヤゴは合計で4,598個体でした。 これは今までで2番目に多い救出個体数です。

また、たくさんのオタマジャクシも救出されました。 既に、手足の出ている個体もありました。 これらはニホンアマガエルと思われました。

大きなウシガエルをつかまえました。今回で2度目です。 これは特定外来生物ですから現地で駆除しました。
ウシガエル

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