生田緑地の生物多様性保全活動

ピクニック広場東階段改修工事準備のため
階段山側崖面裾部の植物の位置確認
(施工範囲を考えてもらうための目印付け)

日時 2020/6/29(月) 10:30〜13:30
場所 生田緑地 ピクニック広場東階段山側崖面
参加者 岩田臣生、岩田芳美

ピクニック広場東階段は、踏面が傾斜している段があって、梅雨時の濡れている時、冬期の凍結時などは、滑って転ぶ事故などがあり、スロープ階段と呼ばれ、時には怖い階段になっていました。
つくられたのは 20 年以上前になりますが、生田緑地の自然に配慮して、防腐剤を使うことなく、材質自体が腐りにくい(高価な)木材を用いていました。
しかし、現在では、材も傷んで、補修の繰り返しでは対応困難となり、今冬には改修することになりました。

この階段の周囲は、私たちが活動を始めた頃は、階段の両側は、背の高いアズマネザサのヤブでした。
アズマネザサのヤブの中を通って谷戸に降りるのは、慣れない人には気持ち悪いと感じさせる園路でした。
ただ、ウグイスなどの野鳥にとっては、快適な移動空間であったようで、ここを通る野鳥を鳥もちで狙う業者が現れたこともありました。
水田ビオトープ班としては、生物の棲息環境を保全しながら、同時に、私たちが気持ち良いと感じる里山らしい景観をつくりたいと考えて活動しています。
そこで、野鳥班に野鳥ファンの立場を代表してもらって、話し合いを繰り返して、植生管理計画を作成し、この地区のアズマネザサを刈り、更に、後には、ピクニック広場までの斜面の草地化を進めてきました。

ヤブが消えると、オカタツナミソウが咲くようになり、タマノカンアオイの花が容易に観察できるようになり、 モミジイチゴ、ウグイスカグラ、ハンショウヅルなども観られるようになりました。
また、階段の手摺は、様々な生きもの、雑木林の中を探し回っても、なかなか出会えない生きものに容易に出会えることもある場所でした。
冬季にはフユシャクの仲間のメスを、春〜夏は多様な昆虫の幼虫を、梅雨期にはカタツムリなどの陸貝を、時にはカミキリムシの仲間やカブトムシなども観察できました。

私たちは、この階段(園路)を、来園者が生田緑地の生物を手軽に観察できる場所にしようと考えて、日常的な管理を行ってきました。
特定の植物を持ち込んで植栽したのではありません。
この場所で自然に発芽した在来の植物が、少しずつ増えて、崖面を覆って、花を咲かせるようになりました。
「谷戸から登ってきた時に、オカタツナミソウの花が咲いていてくれたので嬉しかった。」という言葉を聞いて、オカタツナミソウを大事にしたこともありました。
初めの頃は花を見せてくれなかったアオイスミレが数年後には、谷側の斜面に広がって咲くようになりました。
ハンショウヅルは、花や実が見られるように、アズマネザサ刈りの時も、枝を刈らないように注意して管理しています。
タマノカンアオイは絶滅危惧II類で、牧野富太郎博士が生田緑地の辺りで採集されて、新種として登録した植物で、標本原産地が川崎市である唯一の植物であるため、 川崎の植物として大事にしています。
その他の植物は、管理の面倒な種もありますが、基本的には、普通種ですので、特別な看板を出すことも行っていません。
しかし、今回の活動で、別の絶滅危惧II類の植物が見つかり、当該地区の生物多様性が益々豊かになったと感じました。
残念ながら、最近の来園者は、他の来園者への配慮に欠ける人が増えてしまい、園路沿いに観察し易く管理している植物は、咲き始めた花を摘み取られたり、盗掘されたりすることが起こっています。
改めての啓発活動を考えなければならないようです。

今回の活動の結果、山側については、現在の階段の位置より山側を掘削するような工事は回避してもらいたいことを、生田緑地整備事務所に伝えて、基本的には了解を得ました。
谷側については、必要なら、移植して対応することとして、設計を進めてもらうことにしました。



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