生田緑地の生物多様性保全活動

生田緑地だけに残された希少な植物の保護など
日時:2021/3/18(木) 10:00〜13:00 
場所 生田緑地 東口北雑木林(A13)、野鳥の森(A01)、下の田圃地区(B07)、上の田圃地区(B06)、湿地地区(B05)
参加者 岩田臣生、岩田芳美、鈴木潤三

生田緑地は、大都市川崎の都市公園ですが、その自然は、川崎市民として自慢できるものだと思います。
多くの里地・里山から消えてしまって、県内では、もう生田緑地にしか残っていない植物が複数あります。
この日は、そのような植物の一つであるスミレの保護活動を行いました。
なお、この植物は、神奈川県レッドリスト<植物編>によれば、「消息不明種」と記されていました。
植物の世界は、強いものが勝って隆盛し、弱いものは負けて衰退して行きます。
そこで、残したい植物に少しだけ手を貸して、衰退しないようにする活動で、年 1 回は行うようにしています。

現地に来て驚いたのは、伐倒木が放置されていて、その枝の片付けから始めなければならなかったことでした。
この場所は、最近 5 年間に 2 回、伐採された直径 40cm超の大径材が投棄され、その度に、20〜30 株が消えることになりました。
多分、この崖の上に生えていたコナラの大木を何らかの理由で伐採することになり、崖下に向けて伐倒し、放置したものと推測しています。
幸い、現時点では、当該植物に対しては直接的な被害は無いと思いますが、ここなら伐倒、放置しても構わないと判断されたことを残念に思います。
東口北雑木林(A13) は、生田緑地の中でも特異な雑木林で、生田緑地の生物多様性保全の観点から重要な地区であると考えています。

活動は、崖面のアズマネザサ、スゲ植物、シダ植物、様々な樹木の実生などを減らすことを考えました。
概数としては、往時の半分の 50 株を数えることができました。





合わせて、野鳥の森の同種の状態も調べましたが、アズマネザサ刈りまではできませんでした。


雑木林の林縁に、ナガバノスミレサイシンが咲いていました。生田緑地の雑木林では、普通に見られるスミレです。


帰り道では、中央園路に面した崖面に生育しているヒゴスミレの開花を確認しました。
ここは、活動を始めた 2008年には、北部公園事務所と当調査団の共同作業を 2 回実施し、年 1 回、晩秋なら全てを刈って問題無いと判断し、 以降、ヒゴスミレなどが楽しめる崖面として、行政側で管理することになった場所です。
2019年春には、220株を確認しています。

こうした崖面は、降雨後直ぐに、水分が流れてしまうため、乾燥しがちです。
ニオイタチツボスミレは、そのような荒地的な環境でも生育できます。


生田緑地中央地区北側の谷戸の田圃には、3/4〜5 に、アズマヒキガエルが産卵していますが、この田圃は 2005〜2006年に再生したもので、生きもののために通年湛水としています。
このため、畦は柔らかく、生きものが開けた穴からの水漏れが頻繁に起こります。
アズマヒキガエルの卵は、水が涸れたら死んでしまいますので、湛水状態を確認するために、田圃に回りました。
前日に、班員から、水漏れ補修を行ったと連絡がありましたが、田圃は湛水していて、アズマヒキガエルの卵は孵化していました。
春の陽光を受けて、数匹のキタテハが飛び回っていました。




田圃下草地には、洪水の痕が見られ、水路や池(水溜まり)などに水がありませんでしたので、水漏れを補修し、沢からの水を流し、水辺の手入れを行いました。
水辺の枯草の上を、ビロードツリアブが陽光を浴びて、飛び回っていました。
春の水辺で活動していると、出会える生きものです。


大雨による洪水痕があったので、湿地地区も調べておくことにしました。
湿地地区では、地区内に水を引き入れている水路の途中に、大きな穴が 2つ開いていたので、これを補修しました。

谷戸に面した樹林のコブシ、ヤマザクラ、キブシ、モミジイチゴなどが開花していました。





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