生田緑地の生物多様性保全活動


谷戸の田圃の水漏れ補修など  
日時:2023/7/27(木) 9:00〜11:00 晴
場所 生田緑地 上の田圃など、谷戸の水辺
参加者 井口 実、伊澤高行、鈴木潤三(10:00〜)

生田緑地は長い間、降雨が無かったため、湧水量が極めて少なくなっています。
あちこちで水涸れを起こしていることが、容易に想像できます。
一昨日、7/25(火)は、上の田圃の下の段の水が涸れていたので、手入れを行いました。
と言っても、流入する水が非常に少ないため、水涸れが解消できたわけではありませんでした。
ですから、この日は確実に、水涸れを解消しなければと考えてはいましたが、朝の整備事務所裏には、井口さん、伊澤さんの2名が来てくれましたので、上の田圃のことは任せてしまうことにしました。
上の田圃の下の段は、2006年に再生した田圃ですが、2004年、2005年に再生した田圃と異なり、元の田圃の形状は破壊されていたので、田圃をつくってから暫くは、 粘土質でない部分や、モグラ穴などからの漏水が頻繁に起こっていました。
私たちの活動は、取り返しのつく範囲で、やって、みて、考えるを基本にしています。
最近入団した団員は、自分で観察して、自分で考えて、活動してほしいと思います。
また、活動歴11年の団員は、その経験も活かして、活動してくれればいいと思いました。
湧水の流量がここまで少ないと、水漏れ箇所を全て止めることができたとしても、水が溜まるまでには数日かかると思います。

皆さんが活動を終えて、引き上げた後の田圃の状態は、一昨日の状態と余り変わりなく、水涸れが解消されたとは言えない状態でした。
それでも、田圃の中にいたホトケドジョウは、とっくに低水温の上流に移動していただろうし、田圃は中干したような状態ですから、稲には問題無いと思いました。


城山下谷戸生物保護区の湿地保全  
日時:2023/7/27(木) 9:00〜11:30 晴
場所 生田緑地 城山下谷戸生物保護区の湿地の手入れ
参加者 岩田臣生

城山下谷戸生物保護区は、2004年度に川崎市公園緑地課が主催した生田緑地整備基本計画ワークショップにおいて提案した案が合議され、行政計画とされたものです。
後から知ったことですが、当時、川崎市においては、当該地区に園路を整備する計画が立案中だったらしいのです。 ただ、周囲の谷壁斜面は急峻なので、園路整備はコストがかかるだけでなく、広い範囲の雑木林を伐開して園路を通すだけにしかならないだろうと思われます。
多分、それもあって、トップの英断で生物保護区として位置づけてくれたものと思います。

経緯は兎も角として、この谷戸の湿地には、シラコスゲが繁茂し、ホタルの権威である故大場博士が驚かれたほどの密度でスジグロボタルが棲息していました。
そして、2008年から始めた環境省モニタリングサイト1000里地調査(一般サイト生田緑地)の中大型哺乳類調査の定点カメラに、地球規模の絶滅危惧種とされているミゾゴイが撮影されました。
更に、近年、オオタカが営巣するようになりました。
谷戸を生物保護区とすることは、公園としての直接的利用を目指さないということですが、野生生物の棲息状況が分かってくると、生田緑地の生物多様性にとって、重要な地区だったことが分ります。
この谷戸の湿地は、保全しなければならない重要な場所だと考えていますので、湿地の状態を点検することにしました。

整備事務所裏から芝生広場に降りる尾根路は、ナラ枯れコナラの落枝や倒木の危険に配慮して通行止めになっています。
夏期なので、来園者が通らないことによって、園路両側からアズマネザサが侵出して、園路は草むら状態になっていました。
そして、もう終わったと思っていたヤマユリが1本咲いていました。
また、ヒヨドリバナが数本咲いていました。


城山下谷戸生物保護区の湿地には、ヤブミョウガの茂みを掻き分けて辿り着き、湿地の岸辺にリュックを置いて、まずは状態を観察しました。
湿地はイネ科植物が全域に繁茂していましたが、シラコスゲも残って茂っていました。
定点カメラを設置するのに使っていたアズマネザサの支柱は、倒木に押し倒されて、朽ちていました。

オオタカやフクロウのための水場として造っていた水溜まりからは水面が消えかけていました。
水が消えた湿地の土の上には、形状は定かではないものの、いくつかの足跡がありました。

また、湿地の水溜まりに接していたと思われる周囲のスゲ植物の葉には、いくつものヤゴの羽化殻がありました。
雨が降っていないので残っていたものと思われます。
辺りには多数のオオシオカラトンボが群れていて、連結したものもいましたので、崩れかけた羽化殻ながら、オオシオカラトンボっだろうと推測しました。

湿地の上端部から末端部には、水溜まりを繋げた形状に水流をつくっていましたが、その水溜まり部には僅かな水面が残っていて、また水面が消えた所でも土は湿った状態になっていました。
湧水量は僅かになっていますが、辛うじて、泥を湿らせながら、末端部まで水を届けていたようです。
その小さな水面の上で飛んでいる沢山のオオシオカラトンボを掻き分けて、オニヤンマが流れを辿るかのように飛んでいました。
長期間降雨が無くて、高温が続く夏のために、水流を水溜まりで連続させるという保全方法を考えましたが、この方法が役に立ったと思いました。
極めて浅いものの、水面のある水溜まりが残っていました。



この水溜まり部の泥を上げていたら、4cmほどのオニヤンマのヤゴがモゾモゾと現れました。


まだまだ雨が降りそうにないので、泥上げは少ない範囲で止めて、ヤマコウバシの木陰で一休みしていたら、ヤブヤンマ(オス)が飛んで来て、目の前の枝に止まりました。
逆光でしたが、移動することもできず、その場で、カメラを取り出して撮影しました。



生物保護区を出た所のベンチで少し休憩してから芝生広場に向かいました。
すると、心配して迎えに来てくれた伊澤さんに出会いましたので、一緒に、田圃まで行き、活動後の状態を観察しました。
残念なことに、田圃に水面は広がっていませんでした。
次回の課題です。
田圃下草地のノカンゾウの花が少し増えたように感じました。


活動中、周辺の樹林の中から、オオタカ幼鳥の声が聞こえていましたが、帰り道、通行止めになっているハンノキ林を通ったら、オオタカ幼鳥がいました。
どうも、城山下谷戸生物保護区から、芝生広場上雑木林を経由して、ハンノキ林までの範囲を飛翔練習に使っているのだろうと思われます。
ナラ枯れ対策のための通行禁止区域が幸いして、この広い範囲を飛翔練習の場にしていたようです。


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