川崎の野生生物
イヌタヌキモ

Utricularia australis R.Br.
タヌキモ科 タヌキモ属
根を持たず、捕虫嚢によって動物プランクトンを捕獲消化する食虫植物(藻)。冬期は殖芽の状態で越冬する。
北海道、本州、四国、九州、沖縄、ユーラシア、アフリカ、オーストラリアに分布。
神奈川県RDBでは絶滅危惧TA類である。
川崎では麻生区黒川にあったが、はるひ野開発の過程で移植され、保護されていたものの、2007年には消滅した。 かわさき自然調査団の岩田が、消滅する直前の2006年夏に、数本を保護しておいたものが、毎夏花をつけており、これを黒川に戻すことを考えている。

花 撮影/ 2008/8/10 岩田臣生
捕虫嚢 撮影/ 2007/7/5 岩田臣生
殖芽 撮影/ 2007/10/5 岩田臣生


【川崎のイヌタヌキモ】

【2009/8/29 更新】


神奈川県レッドデータ生物調査報告書2006(123頁)には 「川崎市多摩区(現在の麻生区)黒川は住宅公団による宅地造成により失われ、厚木市上荻野と登戸の産地もすでに絶滅して見られない。 現在生育が確認されている確実な産地は厚木市中荻野の弁天の池であるが、ヨシが繁茂して減少傾向にある。」とあります。
はるひ野で見つけられたイヌタヌキモは、川崎市域から消えようとしている最後のものとなったようです。

イヌタヌキモとは

●2006/5/15 川崎市麻生区黒川はるひ野西部の「よこみね特別緑地保全地区」内の湿地の片隅にイヌタヌキモを見つけました。 当該開発の際に移植保護されたものが僅かに残っていたものと推測されます。


開発当時の関係者の打ち合わせ資料の中に、この湿地と現在の黒川谷ツ公園地区に分散移植した記録がありました。

●2006/5/25 様子を観察しに行きました。


●2006/7/12 様子を観察しに行きました。


●2006/8/29 様子を観察しに行きました。
花はつけておらず、水温が40℃を超えている状態であったことから数本を採取し、持ち帰って、水槽に入れました。


●2006/11 水槽の中で成長し、20個ほどの殖芽をつくりました。冬の間、この殖芽は水底に沈んでいました。

●2007/3/1 翌年2月には殖芽が水槽の中で成長し、浮かび始めました。


●2007/3/9 成長するにつれて、水面に広がり始めました。


●2007/4/23 4月下旬には更に成長し、お互いに絡み合っていました。


●2007/7/5 7月になると水槽の全面を埋めてしまいました。


●2007/8/18 8月中旬には、睡蓮の葉の間に花を咲かせました。。


●2007/10/5 10月に入ると、多数の殖芽を作り始めました。まだ花も咲いています。


●2008/4/6 


●2008/4/29(火) 川崎から消えようとしている黒川はるひ野のイヌタヌキモを、 一時的に生田緑地の谷戸で管理栽培により保護することについて、倉本・生田緑地植生管理協議会会長と 岩田・かわさき自然調査団水田ビオトープ班班長が現地で協議・検討し、今年新たにつくった池にカゴに入れて置きました。
4/29  生田緑地


●2008/7/9(水) イヌタヌキモを黒川谷ツ公園に入れることについて、はるひ野里山学校と協議しました。
参加者 北部公園事務所(堀江、山口)、はるひ野里山学校(村上代表、鉢嶺、斎木)、かわさき自然調査団(岩田臣生)
現地の止水域はヨシが繁茂して、開放水面がなくなっていました。


●2008/8/4(月) イヌタヌキモを黒川谷ツ公園に入れることについて黒川はるひ野管理組合と協議しました。
参加者 北部公園事務所(堀江、山口)、黒川はるひ野管理組合(立川会長、外3名)、かわさき自然調査団(岩田芳美、岩田臣生)
かわさき自然調査団と生田緑地における保全活動について説明し、生田緑地の谷戸と管理栽培しているイヌタヌキモを見て戴きました。


●2008/8 水槽のイヌタヌキモは、今夏も花をつけてくれました。 


●2009/4/13(月) 黒川はるひ野管理組合にイヌタヌキモ30株程度を手渡しました。
参加者 北部公園事務所(堀江、山口)、黒川はるひ野管理組合(立川会長、野島副会長)、かわさき自然調査団(岩田芳美、岩田臣生)


●2018/8/4(土) よこみね緑地に移植したイヌタヌキモが花を咲かせているから見に来ないかと「水辺のある里山をまもる会」の織野さんからお誘いを受けて、 見に行きました。
すると、よこみね緑地の湿地のほぼ全水域の岸辺沿いにイヌタヌキモが広がっていました。 川崎の市民力、バンザイ!
まだ、その全てに花が咲く状態にはなっていませんでしたが、もう一工夫で、沢山の花が見られるようになるでしょう。


特定非営利活動法人かわさき自然調査団事務局
Kawasaki Organization for Nature Research and Conservation