里山の自然学校2015 第7回 夏の里山


里山の自然学校2015
第7回《夏の里山》

【2015/8/24 更新】

日時 2015年8月23(日) 10:00〜15:00 曇
場所 生田緑地整備事務所2階、谷戸
参加者 中川 悠
    伊東智勇、大橋拓真、沖本世織、甲斐杏澄、工藤千穂、佐藤晴奈、軸丸陽希、富田勇樹、中野心吾
                                                   10人
講師 岩田臣生、岩田芳美、藤間煕子、山本 晃
サポート 神山幸雅
                                                   5人

第7回里山の自然学校は、夏の里山体験です。
生田緑地整備事務所を出たところから、直ぐにチョウの幼虫についての観察学習が始まりました。

アシグロツユムシ幼虫がいました。 終齢幼虫でしょうか、緑色が濃く、不思議な雰囲気を湛えています。
姿が成虫と幼虫では違いすぎるため、図鑑を調べていた子どもたちも疑っていたかも知れません。 ただ、「両方とも脚が黒い」と言った子がいました。

要注意外来生物のアカボシゴマダラの幼虫を観察できました。 すっかり定着してしまったようです。
ゴマダラチョウは産卵しないと思われる園路に面した小さなエノキで生活していました。

まだ緑色のドングリをつけたクヌギの枝先が地面に落ちていました。
どうして落ちているのかと子どもたちに尋ねると、何かが卵を産み付けたのではと答える子がいました。
そこで、ドングリを切って、中を観察してみました。
クヌギやコナラのドングリに孔を開けて産卵し、その枝を切り落としているのはハイイロチョッキリという体長6〜8mmの甲虫です。 ハイイロチョッキリが開けた孔は、普通、殻斗の縁にあります。
チョッキリという面白い名前は、枝葉をチョキンと切ることから来ているようです。
口吻が長いのでゾウムシのようでもあり、産卵したものを加工するのでオトシブミのようでもありますが、現在はチョッキリゾウムシ科として扱われています。 ただ、チョッキリの加工の仕方は、揺籃をつくるもの、葉を切るだけのもの、茎を切るもの、実に孔を開けて産卵するものなど様々です。
クヌギやコナラのドングリに産卵する甲虫は、他にも、クリシギゾウムシ、コナラシギゾウムシ、クヌギシギゾウムシなどがいますが、シギゾウムシはドングリが未熟なうちに産卵して、ドングリが自然に落下するのを待ちます。
ですから、ドングリの中にいた幼虫が何かを同定するのは大変難しいのですが、ドングリに産卵する生物がいることを学習することは大切だと思います。
ハイイロチョッキリがドングリの中に産卵した卵は4〜6日で孵化し、子葉部を食べて、3〜4週間で成熟し、ドングリに孔を開けて脱出し、土中に潜り、越冬し、翌年5〜6月に蛹化、羽化します。

毎年観察してきたクヌギの樹液レストランは、夏休みに急増する昆虫採集目的の来園者の行動が目に余るものだったようで、公園管理者によってブルーシートが巻かれ、全く観察対象にならない状態になっていました。
この樹液レストランは生田緑地の老舗の樹液レストランなので、クヌギを痛めつけられないような開店の道を考えてあげて欲しいと願います。
中央園路を離れて谷戸へ降りました。

ピクニック広場付近では、ハギ(蕾)、オトコエシ(蕾)、ヤブタバコ(蕾)、ミズヒキ(花)、キンミズヒキ(花)、キツネノマゴ(花)、 ヤブミョウガ(花実)、トモエソウ(実)などが見られました。
ヨコバイやハゴロモの仲間の幼虫や成虫がいました。
ハラビロカマキリの脱皮殻も見つかりました。

園路沿いには様々な花が咲いていましたが、ヤブミョウガとミョウガ、ミズヒキとキンミズヒキなど、 名前は同じでも別の仲間だということを学習しました。

ヤマトタマムシの死骸が園路に落ちていました。

ミスジマイマイがいました。 この大きさの右巻きのカタツムリはミスジマイマイだということ、左巻きならヒダリマキマイマイだということを学習しました。

スジグロシロチョウを観察しました。 街の中で見る白いチョウはモンシロチョウが多いのですが、生田緑地で見る白いチョウはスジグロシロチョウが普通です。

デッキの上にアゲハモドキが落ちていました。 掴もうとしたら動き出したので、そのまま逃がしました。
ジャコウアゲハ♀を少し小さくしたような姿の蛾です。
幼虫は白装束を着て、ミズキの葉などを食べています。

ハンノキとハンノキ林についても学習しました。
生田緑地のハンノキ林は環境省の特定植物群落に指定されている自然林で、60〜70本のハンノキが生えています。
ハンノキ林は遷移の途中で一時的に成立する植生で、放置すれば、やがて消滅するようですが、このことは同時に水辺が陸地化することを意味しています。 即ち、ハンノキ林の林床の水辺や湿地に棲息していた生物が棲む場所を失い、消えていくことを意味しています。
そこで、私たちは、生田緑地の生物多様性の重要拠点としてハンノキ林の保全活動も行っています。

梅畑で一休みしました。
まだ、お弁当には早いので、下の田圃まで行くことにしました。

オニヤンマが谷戸を上下しています。 これを採集して観察しました。
オニヤンマも、最近では少なくなったという話を聞きますが、生田緑地では普通に見られています。
水流の保全と採集から観察への誘導など、地域に応じた対策が必要かも知れません。

国内最大のバッタであるショウリョウバッタも観察できました。

田圃付近では、シオカラトンボオオシオカラトンボが多数見られました。
クモの団居(まどい)を観察できました。
クモの卵は卵嚢(らんのう)の中で孵化し、2齢幼虫は卵嚢の近くに集まって生活していて、この状態をクモの団居と呼びます。 少し刺激を与えて、「クモの子を散らす」様子を観察しました。
イネ(花)、ジュズダマ(花)、ミソハギ(花)、ユウガギク(花)、クサギ(花)、ノブドウ(蕾?)、ヤブミョウガ(花実)などを観察できました。
1950年代に侵入した北米原産のオオブタクサが数本、カナムグラに半ば覆われながら蕾をつけていました。 カナムグラが駆逐してくれそうですが、一面に広がったカナムグラも含めて、木道からの景観を考えての管理が必要だと思われます。
木道脇のヤマグワに、スケバハゴロモやアオバハゴロモの成虫がともに群れていました。

下の田圃では、すっかり穂が無くなったイネについて、アライグマに食べられたことを話しました。
また、この近くで、前日にアライグマ1頭が箱ワナにかかったことも話しました。

梅畑に戻って、お弁当にしました。

そこにツバメシジミがやって来ました。

記念の集合写真を撮りました。(撮影 岩田)

在来のゴマダラチョウに出会いました。

クロクサアリの群の中にいるマダラマルハヒロズコガの幼虫も観察できました。
芝生広場では、落葉の陰などにコオロギがいました。

イロハモミジの実で遊ぶ子がいましたが、秋にならないと飛ばすのは無理のようでした。
若いお兄さん先生は、ここでも大人気でした。

モモスズメが飛んできて、木に止まりました。
捕まえても、飛んで逃げようとしないので、子どもたちの指に止まらせてみました。
最初は怖がっていた子どもたちも、一人が勇気を出して止まらせたら、後は奪い合いに近い状態になりました。

枯れたという理由で伐られることになったものの、根元から伐採するのではなく、危険のない範囲で残してもらった切り株を使っての遊びが始まりました。 小さな冒険といったところでしょうか。

生田緑地整備事務所に戻って、今日出会った生物を整理しました。

それから感想文を書きました。
書き終わった人にはグレープフルーツが配られました。 昔はスイカだったり、アイスキャンデーだったりしましたが、そんなことを思い出してのサービスでした。

書き上げた感想文は、一人一人発表しました。


以上

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