生田緑地の谷戸の自然保全活動



萌芽更新地区のヤマグワ刈り(植生管理を考える)
日時 2015/10/24(木) 9:40〜12:40 晴
場所 生田緑地 萌芽更新地区
参加者 岩田臣生



この日は萌芽更新地区のクヌギの伐り株からの萌芽の保護とヤマグワ刈りを行いながら、樹林の状態を調べ、植生管理を考えました。

萌芽更新地区(A06)は、伝統的な里山管理である萌芽更新を行っている雑木林を見せる場として、1998年末に、1200uのコナラ林を伐採した区域です。
この時に伐採された樹木は、コナラ46本、クヌギ27本、イヌシデ13本、エゴノキ1本、ヤマザクラ1本、ケヤキ1本、ミズキ1本、合計91本でした。
同時に行われた補植は、コナラ59本、クヌギ45本、エゴノキ5本の109本でした。
直径50cmを超えるような大木6本を含めて 52本の樹木は残置されました。

伐採後の経過については繰り返しになりますが、植生についてのモニタリングは継続されていたものの、コナラ林育成管理の体制がつくられませんでした。
コナラ、クヌギの伐り株からの萌芽枝は、やがて枯れ、8年目には殆ど残っておらず、他の樹木が優勢となり、林床は暗く、コナラ林と呼べる状態ではありませんでした。
伐採後は萌芽更新地区として広報がなされていたようで、近隣から見学に見えた団体も多数あったようですが、「これが萌芽更新地区か!」とがっかりして帰られたと聞いています。

市民部会が活動を開始して間もない2008年1月に、この萌芽更新地区の植生管理について話し合う市民部会を開催し、 現状がコナラ林になっていないことを確認し、改めて、規模は別として萌芽更新地区と呼べる地区を目標植生とすることを合議しました。
新たな萌芽更新地区の対象地は A06-1a とし、2009〜2013年は、ヤマグワ、アカメガシワは勿論のこと、高木層を形成していたキリ、ムクノキ、アカシデ、クマノミズキなどの大径木を伐採し、ギャップをつくって林内を明るくしました。
これによって、当初に補植されたものと思われるクヌギは活力を回復し、低木層も著しく繁茂するようになりました。

こうした変化を見て、一部の場所では、そろそろ萌芽更新が可能な明るさになったと判断し、2014年1月に、斜面下方のコナラ2本、クヌギ1本を伐採し、萌芽更新を試しました。
しかし、コナラの萌芽枝は枯れてしまいました。
クヌギの萌芽枝は残っていましたが、周囲の低木の繁茂が著しいことから、その低木(ムラサキシキブなど)を除伐するなどの管理を今回行いました。
また、ヤマグワも除伐しました。
園路から近い場所のヤマグワは太く、大きいものでしたが、区域内部のものは細く、小さく、明るさの違いを教えてくれました。

林内を明るくするためには、更にギャップを広げなければならないと思います。 そのためには、残してあったアカシデを伐らなければなりませんが、生田緑地ではアカシデは少ないので、生物多様性という観点からは残すべきものと考えます。
「取り返しのつく範囲で、やってみて考える」という基本に基づいて、伝統的里山管理を見せる樹林という目標植生の変更を検討したいと思います。
当該地区の斜面下方は十分な明るさがありそうなので、下側の園路から萌芽更新しているコナラ・クヌギを見られるように林縁を管理し、 大半の樹林としては生物多様性を考えて管理するという方向に変更したいと考えました。
これは、今後自然会議に諮って承認を得たいと思います。

シジュウカラをはじめ、小さな野鳥が群れていました。
カラスウリの実が赤く色づき、ノササゲの実が小豆色に染まりました。 ゴンズイの実も赤くなりました。 園路に近い、明るい場所には、イノコズチなど、実をつけているものもあることから、刈るのはヤマグワのみとしました。


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特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for Nature Research and Conservation