生田緑地自然環境保全管理会議市民部会
平成27年度 6月の里山倶楽部B

植生管理を考えよう 萌芽更新地区


日時 2015/6/20(土) 10:00〜13:00 曇
場所 生田緑地 萌芽更新地区
講師 藤間熈子
参加 今井田恵方、裏戸秀幸、日高信康
  (生田緑地の雑木林を育てる会)白澤光代
  (富士通)岩渕裕輝
  (資生堂)莇 清
  (明治大学大学院)松本 薫
  (生田緑地運営共同事業体)額谷悠夏
  (市民部会事務局)岩田臣生、岩田芳美、山下淳也(高校2年)       12人

植生管理にモニタリングは欠かせません。 里山倶楽部でも、今までに何回か、植生調査についての実習を試みてきましたが、なかなか難しくて、上手く取り組めませんでした。
今年は、藤間先生にお願いして、参加者が植生調査を体験学習しながら、調査結果は植生管理に活かすという形で試すことにしました。

平成27年度第3回里山倶楽部Bは萌芽更新地区を対象に行いました。
萌芽更新地区は、伝統的な里山管理としての萌芽更新を行っている雑木林を具現化して、見せる雑木林とする目的で、コナラ林1200uを、1998年12月に伐採した地区です。 伐採と同時に補植も行っていました。
伐採した伐り株からの萌芽は5年ほどは成長したものの、その後、枯れてしまったようです。
萌芽更新にも失敗し、コナラ林にもなっていないと判断し、2008年1月の市民部会において、萌芽更新地区の植生管理について話し合い、萌芽更新地区という名称に相応しい伝統的な里山管理を行って、 これを観察できる地区にすることを合議しました。
この時残っていたコナラやクヌギは亜高木層に留まり、弱弱しかったことから、高木層を構成するムクノキ、アカシデ、キリ、ケヤキ、ハンノキなどを数本伐採し、ギャップをつくることから始めました。
このギャップによって林床はだいぶ明るくなり、ゴンズイをはじめ様々な実生が伸び始め、弱弱しかったクヌギは活力を取り戻しました。
そして、斜面の下の方の園路に面した部分については十分な明るさが確保できたと判断し、2014年1月に萌芽更新を目的に、コナラ3本、クヌギ1本を伐採してみました。
これらは萌芽はしましたが、コナラの萌芽は細く、徒長枝と言えるものではありませんでした。 今年も辛うじて葉をつけていましたが、これら3本のコナラは萌芽更新できないと思います。
伝統的な里山管理としての萌芽更新地区として再生するのであれば、もう少し広い範囲の樹木を伐採してコナラ、クヌギだけにするぐらいのことをやらないと不可能だと思います。
しかし、そのためには、大きく枝を広げているアカシデを伐採しなければなりません。 しかし、アカシデは生田緑地では非常に少ない樹種であり、萌芽更新も無理なようです。 そして、今回の植生調査で、草本層〜亜高木層にはアカシデが見つかりませんでしたから、実生も期待できません。
市民部会で合議したとはいえ、コナラやクヌギの枝を薪や炭の原料として採取していた時代の管理である伝統的な萌芽更新地区の具現化に固執すべきかどうか疑問は解消できませんでした。

まず、生田緑地整備事務所2階に集合して、顔合わせと活動目的の確認を行ってから萌芽更新地区に向かいました。
植物社会学的植生調査の講師をお願いした藤間先生は、1999年から萌芽更新地区の植生調査を毎月、植物班と共に行ってきた方です。
植生調査の記録係は、水田ビオトープ班に入団したばかりの高校生 山下くんにお願いしました。

萌芽更新地区上側の探勝路に移動して、雑木林の相観や階層構造など、雑木林の見方などについて講義をいただいてから、区域に入って、調査を開始しました。
藤間先生が設定し、ロープを張っていた調査区画の目印は、2008年以降のギャップをつくるための活動の過程で撤去していましたので、先生の記憶をもとに20m×30m程度の区域を調査しました。


生田緑地整備事務所裏にミドリヒョウモンが来ていました。


林床にはアズマヒキガエルがいました。

ヤマグワの葉にクビアカトラカミキリ♀がいました。 県内では分布を広げつつある甲虫で、もしかすると、川崎市内での初記録かも知れません。

実生の細い小枝に擬態するナナフシモドキがいました。それも、褐色と緑色の両方の成虫がいました。

林内を歩くと渦巻き状の隠れ帯が目立つクモの巣がありました。 ウズグモの巣です。

ワカバグモ、コシロガネグモなどもいました。


今回の植生調査では、観察された植物の全種数は90でした。
樹林としては明瞭な4層構造が認められ、高木層は8種で構成され、コナラを被度3(25〜50%)、群度3(大きな群をつくる)としました。 また、クヌギ、ヤマザクラ、アカシデを被度2(10〜25%)、群度2(小さな群をつくる)としました。
藤間先生からは、良好な雑木林と言えるいう評価をいただきました。
2010年の皆伐更新の計画時に専門家に意見を求めたところ、誰もが「樹齢50年のコナラの萌芽更新は無理」と答えました。
とすれば、1998年にコナラ林を伐採した時に萌芽更新地区として、一部の樹木を残しながら伐採し、補植もしたということ自体が中途半端な計画であったと思われてきます。 もはや、伝統的な里山管理に固執することに意味はなく、生物多様性を重視した雑木林に育てる管理を進めるべきなのかも知れません。 その中で、一部に萌芽更新しているクヌギやコナラも見られるという程度で良いのではないでしょうか。


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特定非営利活動法人かわさき自然調査団
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